◆ ダイエット一直線 ◆




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これは、ダイエットの道に命を懸けた、21日間にわたる、男の記録である。


ダイエット法は男が編み出した必殺技、その名も
「夕食ダイエット料理による激痩せ脂肪絞り逆十字」だ!!

(※注  プライド系の総合格闘技の世界で、極め技としてよく使われる「腕ひしぎ逆十字」をイメージして欲しい。恐ろしく危険で効果的な技だとわかってもらえるだろう。もし、わからなくても全く問題はないが。)


簡単に説明すると、必殺の「夕食ダイエット料理」によって、睡眠中に体内の脂肪を絞り出し、翌朝体重計に乗ると、驚くべき激痩せ数値を見れるという究極のダイエット法である。


では、もう少し親切に、詳しく説明しよう。

ダイエット料理は夕食である。
もちろん、このオレが作る。(時には妻のこともあるが)
料理のポイントは、量はたっぷりだがカロリーは少し
しかも、野菜だけでなく肉も程ほどにあって、食後感は満腹であること。
決して我慢しないストレスを溜めない究極の料理を追求するのである。

もちろん、いっしょにビールを呑む。

水割りも呑む。

ワインだって呑むのだ。


だけど痩せる

そう、寝る前のカロリーの摂取量をググッと抑えることで、睡眠時における体内の代謝活動による「エネルギー消費分」がダイエット料理による「カロリー摂取分」を上回り、その結果脂肪が分解され、自然に痩せていくという単純明快なシステムなのである。


だから、朝、起きる度に痩せていくはずなのだ。


その効果については毎朝の体重測定によって判断する。


まあ、言ってみれば、これは「夕食ダイエット料理」「翌朝の体重」との因果関係を明確に示した貴重な記録でもあるわけだ。

これから、ダイエットに取り組む人には大いに参考にして欲しい。


巨大な敵、憎き「脂肪」との闘いのゴングが今打ち鳴らされた。


それは2002年の夏の終わり、月曜日の夕食から始まった。……



ラウンド1  (スタート ±0グラム)

 闘いの始まりだ!(バンバンジーと豆もやし炒め) 


ふ、ふ、ふ……。
今日から疾風怒濤のダイエット作戦の開始である。
夏の間に貯めこんだ脂肪を一気にはきだすのだ。

近所でやっていた祭りのビアガーデン広場の前を通りかかり、串カツでぐいっと一杯呑みたくなったが、ぐぐっと堪えスーパーに寄って食材を買い、すばやく家に帰る。


鶏のささ身8本のスジを取り、皿に載せて日本酒を振りかけ、塩を振る。
それをラップにかけてレンジで650Wの4分30秒にセットする。

きゅうり3本を5センチくらいの幅で縦に細かく刻んでおく。
レンジで茹で上がったささ身をザルに取り、冷めたら包丁で細く切る。

皿にきゅうり、ささ身を盛り付け、「Cook Do」棒棒鶏(バンバンジー)の素をかけて出来上がり。

もう一品はフライパンに油を引き、生姜とニンニクを小さじ一杯づつ同量入れ、軽く炒めたところへ豆もやしをどばっと投入。味の素を振り、火が通ったところで、塩コショウを振って出来上がり。

今晩は以上の二点だ。
どうだ! 文句あるか。
究極の夕食ダイエット料理なのだ。

でもビールは絶対呑むんだよなあ。 


ラウンド2  (スタートから −600グラム)

 妻の料理(炒り豆腐と唐揚げ)は如何に?


早速ダイエット料理の効果が現れた。
昨日の朝と今朝の体重を比較すると600グラム落ちている。
これを10日続けると6キロ痩せることになる。

目標の、そう、スピーク・ラークのCM看板に出ている男の腹(6つに割れた腹のことね)になる日は近そうだ。


今晩の料理は妻が工夫を凝らす。
グリーンアスパラと炒り豆腐のあんかけ鶏のむね肉の唐揚げレタス・カイワレ・トマトのサラダ、以上三点である。
唐揚げというのが少し気になるが、部位がパサパサのむね肉であり、しかも皮を取り除いているのでカロリーは低そうだ。

ふ、ふ、ふ……。明日の朝、体重計に乗るのが楽しみである。


ラウンド3  (スタートから −700グラム)
 

閃きの、揚げずに“茹でた豚”で勝負!!(酢豚)


昨晩妻がその効能を滔々と語るのを耳にしながら口にしたダイエット料理は、口ほどにもなく、その効果はほとんど現れなかった。
今朝期待して体重計に乗ったのだが、たった100グラムしか落ちていない。
前日オレが作った料理で600グラム落ちたことを考えると余りにお粗末な結果である。
こんなことでは疾風怒濤の即効ダイエットの実現には程遠い。

やはり、今夜の料理はオレが作るしかあるまい。

会社の帰り、いつものスーパーに寄って今夜のメニューについて熟考する。
何度も野菜売り場と肉売り場の前を行き来する。

そして、閃いた。よし、決めた! これだ!

早速家に帰って台所の前に立つ。

今夜の食材は豚肉背ロース(しゃぶしゃぶ用)260グラム、玉ねぎ一個、白ねぎ一本、ピーマン三個、人参一本、椎茸六枚、きゅうり一本、たけのこ水煮一袋、以上である。

玉ねぎ、白ねぎ、ピーマン、人参、椎茸、きゅうり、たけのこ全ての野菜を包丁で適当な大きさに切る。
たけのこだけ水で洗い、そして日本酒に浸けておく。

大きなフライパンにだしの素一袋と水を入れて沸騰させる。
湯が沸いたらそこへしゃぶしゃぶ用の豚肉を入れ、茹で上がったらザルに取って、軽く塩コショウを振っておく。
茹でることにより余分なアブラとアクを取り除き、大幅なカロリーカットが出来る。

先ほどのフライパンを洗い、身体に脂肪がつきにくいというエコナクッキングオイルを引き、玉ねぎ、人参など火が通りにくいものから順に野菜を投入しては炒めていき、味の素と塩コショウで軽く味つけをする。
最後に豚肉を入れ、フライパンを煽る。

いよいよ最終局面である。
ここで登場するのがタマノイの「酢豚の素」だ。
二袋を240CCの水で溶き、上から少しずつかけてはかき混ぜていく。

何だ、ただの酢豚じゃないか! と攻撃してはいけない。
他人を責めるのはたやすいことである。
豚を揚げずに、茹でたところが偉いのだ。

そこのところを評価して欲しい。

たっぷりの野菜とカロリーカットされたヘルシーな豚肉。
しゃぶしゃぶ用の肉がやけに酢豚の甘酸っぱい味に合っている。
これはいけるではないか!

しかも、明日の朝は確実に体重が落ちているはずである。

ふ、ふ、ふ……。
結果は明日の朝、判明する。


ラウンド4  (スタートから −1000グラム)

もずく酢に始まり、ささ身の八宝菜と赤ワインでどうだ!!


今朝体重計に乗ると300グラム落ちている。
やはり、オレのダイエット料理は即効的だ。

この三日間の夕食ダイエット料理でちょうど一キロ減量したことになる。
まあ、このうち妻の料理では100グラムしか落ちていないが。

となると、当然今夜もオレが料理を考え、作るしかなさそうである。
さあて、何にしようか。

スーパーで昨日と同じように野菜売り場と肉売り場の間を行き来しながら悩んだ結果、今夜はもずく酢八宝菜に決定した。
八宝菜の中身は椎茸、えのき、しめじ、水菜、チンゲン菜、白ねぎに鶏のささ身である。きのこ類をたっぷり入れている。
肉は敢えて豚ではなく鶏を選択した。
しかも鶏の中でも脂身が最も少ないささ身を使うところが渋いではないか。

もずく酢の効能については語るまでもない。
八宝菜については尚更だ。
今夜はビールのあとにワインも一本空ける。
赤ワインに含まれるポリフェノールは血をサラサラにしてくれる。

明日の朝は本当に楽しみだ。
まるで自信のあるテストの結果を待つ学生の気分のように、今わくわくしている。


ラウンド5  (スタートから −700グラム)

 ダイエット街道でグレて、はしご酒のあとチーズバーガー


体重計に乗って愕然とした。
そんな馬鹿な!
何と体重が300グラム増えているではないか。

予想では300グラムから500グラム落ちている筈であった。
それが逆に太ってしまうとは何事だ!

茫然自失のまま、会社へ向かった。
昨夜の料理について考えたが、欠陥は見つからない。
量はたっぷりだがカロリーは少なかった筈だ。
ワインが太るなんて考えられないし。
では、一瞬の水太りであろうか? 

ともかく、この夜はとてもダイエット夕食などを作る気になれず、ついにグレてしまった。

「中町食堂」で生ビール三杯と熱燗一本を呑み、「プロント」で水割りのデキャンタを一本

さらに家に帰って缶ビールを開け、チーズバーガーまで食べてしまった。

う〜〜、明日の朝が怖い。

ダイエットの道は果てしなく遠く、何と険しいものだと身に滲みて感じた晩夏の夜であった。


ラウンド6  (スタートから −1200グラム)

今日は真剣に、炒め物とトマト煮物 


今朝恐る恐る体重計に乗ったら、何と500グラム落ちていた。
おお! これは凄いことではないか!! 
まだ諦めてはいけない。
神は私を見捨ててはいなかったのだ。

昨日の朝の体重アップは単なる水太りだったのだ。
しまったなあ、昨夜呑みに行かなければ、そしてとどめのチーズバーガーを食べてさえいなければ、もっと驚くべき激痩せ数値が見られたのに。

よし、今日は頑張るぞ!
ということで、ダイエット街道に入って六日目の料理を作る。

今日は炒め物とトマト煮物の二点。

まず、下ごしらえとして、しゃぶしゃぶ用の豚肉をグツグツと沸騰しただしの効いた湯の中にくぐらせ、アブラとアクを落としてザルに取り、軽く塩コショウを振っておく。

それでは炒め物から行こう。
フライパンにエコナクッキングオイルを引き、生姜とニンニクを小さじ半分づつ同量入れ軽く炒める。
そこへエリンギ、豆苗、下ごしらえしておいた豚肉の順に入れて炒め、味の素、塩コショウを振り、フライパンを何度か煽って、皿に盛り付ける。
その上にぱらぱらと鰹節をかけて出来上がり。

次はフライパンにオリーブオイルを引き、ニンニクを小さじ一杯入れて、玉ねぎ、人参、ピーマン、豚肉、白ねぎの順に炒め、味の素と塩コショウを振りかける。
そこへホールトマトをぐじゅぐじゅに潰し塩コショウで味付けをしたものを合わせ、ケチャップを少し足して、弱火で約七分煮詰める。
これだけだ。何と簡単なんだ。簡単すぎる。

ビールも水割りも呑んだ。

そして、今、満腹である。

ダイエットってこんなに簡単でいいのだろうか?
何だか怖いようだ。


ラウンド7  (スタートから −600グラム)

必殺技のクリームシチューで勝負だ!!


今朝体重計に乗ると、ガガーン!!
何と600グラムも増えている。
ダイエット街道は本当に厳しい道のりである。

でも、これは二日前と同じ水太りに間違いない!
「激痩せ」の前の「ちょっと太り」だ!
と断定して、今日の測定値は無視することにした。


 ダイエットの道に命を懸けたぁ〜 男の意地が火と燃えるぅ〜♪
 寄るなぁ〜 触るなぁ〜 弾けて飛ぶさぁ〜♪
 あ〜あ〜あぁ ああああぁ〜 あ〜あ〜あぁ ああああぁ〜♪
 ダイエ〜ット 一 直 線 !!!!


そうオレたちの世代は皆「柔道一直線」を見て育って来たんだ。
一条直也が真空投げを編み出したように、俺もダイエット料理の必殺技を開発するのだ。

そんな勝負師の目に留まったのは、テレビ画面に流れるハウスシチューのCMであった。
湯気が上がって何とも旨そうである。

ようし、今晩はクリームシチューに決めた。では早速試合開始だ。

鶏のむね肉を二枚用意する。
そう、鶏の中でもささ身に次いでアブラの少ない部位である。
むね肉の皮の部分をすべて取り除き、それに日本酒をかけ塩を振り、レンジに入れ650Wで5分30秒にセット。
出来上がったら少しアブラが浮いている汁を流して適当な大きさに切っておく。
次にアスパラも適当な大きさに切り、レンジでチンして茹でておく。
さらにほうれん草も適当な大きさに切り、それを水にさらしておく。
全部適当でいいのだ。
これで下ごしらえは終わり。

鍋に玉ねぎ、人参を入れて沸騰させる。
じゃがいもは使わない。ポテトはダイエットの大敵である。
玉ねぎと人参が柔らかくなったら味の素を振り、鶏とアスパラを入れる。
さらにぐつぐつと沸騰させ、少しのアクも見逃さずしっかり取る。
アクを取りきったらシチューのルーを落とし弱火で煮込む。
とろみがついたところで、水にさらしていたほうれん草を入れてかき混ぜ、弱火でしばらく煮込んで出来上がり。
何と簡単でヘルシーなシチューなんだ。

これにブロッコリーカイワレのサラダを添える。

今夜のメニューは究極のダイエット料理になりそうである。

ふ、ふ、ふ、……。
結果は明日の朝、判明する。


ラウンド8  (スタートから −1700グラム)

 激痩せに妻も乱入!! (イタリアン豆腐ステーキ)


驚きの激痩せだ!
何と昨日から1.1キロも落ちている。
昨夜のヘルシーシチューとサラダは究極のダイエット料理だったのだ。

それにしてもダイエット料理を始めてまだ一週間。
これだけの短い期間で1.7キロの減量は我ながら凄いと思う。
オレの夕食ダイエット法は正しかったのだ。

さあて、今晩はどんなメニューにしようかな?
と会社で考えていると、妻からメールが届いた。

「今日は私がダイエット夕食を作ります。美味しいワインを頼みます」

どうやらオレのダイエット街道に割り込み、参加同行したいらしい。
一抹の不安を感じつつ今夜は妻の乱入を許諾し、カサ・ドノソのメルローワイン(880円)を買って帰る。

妻のメニューはメインが豆腐ステーキ。
豆腐
と茹でた鶏ミンチ白ねぎ玉子を混ぜフライパンで焼き、その上にオクラ大葉トマトを載せて味ポンをかけたものである。
テレビではこれをイタリアン料理として紹介しており、是非一度作ってみたかったという。

テレビと違うのは鶏のミンチを茹でて使っていることだ。
うむ、この点は徹底したカロリーカットであり評価出来る。
サブは蓮根と糸こんの煮物であった。これも砂糖を抑えているという。

さあて、妻の料理は究極のダイエット効果があるのか!
結果は明日の朝分かる。


ラウンド9  (スタートから −1800グラム)

 ダイエット街道からラーメン街道へ(ラーメン二度食い)


今朝の体重は前日比マイナス100グラム。
妻のダイエット料理は前回同様わずか100グラムしか効果が現れない。


その上、今日オレはとんでもない過ちを犯してしまった。

先日、岡山が田舎である会社の後輩から「岡山ラーメン紀行」なるメールが届いた。
盆休みに帰省した折にラーメン屋巡りをした迫真のレポートであった。

それは何とも魅惑的であり、かつ大変危険なレポートであった。
そして岡山出張の今日、その中で「絶品!」と紹介されていたラーメン屋のことが気になってしょうがなく、ついついその店を覗いてしまったのだ。

言うまでも無く、ラーメンはダイエットの敵である。大敵である。
ダイエット街道にはラーメン屋は一件たりとも存在してはならないのである。
それなのに、バカ、バカ、バカ……。あ〜〜、食ったのだ。

食ってしまったものはどうしようもない。
でも、そのラーメンがメチャクチャ旨かったのなら良かった。
アキラメもつくし、まだ救いようがあった。
被害も最小限に食い止めることが出来たのだが、よりによってその店のラーメンは自分の味覚と余りにズレていた。
スープの表面にアブラが浮いており、鶏ガラだしが効き過ぎでとにかく脂っこい。麺も柔らかかったし。
期待しすぎていただけにショックが大きかった。

消化不良というか、不完全燃焼のまま店を飛び出したオレは燃え尽きるべく、あろうことか次なるラーメン屋を目指してクルマを走らせたのであった。
完全に冷静さを失っていたのだ。

二軒目はガイドブックによると岡山ラーメンのルーツと言われている店だ。
インターネットの人気投票では「岡山醤油ラーメンアッサリ系」部門で堂々の一位である。

今度こそ間違いはあるまい。
出てきた中華そば(600円)は大きな丼にスープが驚くほどたっぷり入っている。
スープが多すぎて麺が隠れてしまっている程だ。
自信のスープを恐る恐る啜ってみる。
む、む、む? うどんだしを更に濃くしたような味だ。
しかも、そこに何だか変わった独特の甘みが加わっている。
うーむ、解らない。
昔からこの味に慣れ親しんだ人にはこの味が堪らないのだろうが、初心者には全く理解出来ない。
ボク、ワカンナ〜イ! という感じだ。

旨さを堪能することが出来ず、しかも腹に中には味覚がズレた二杯のラーメンが詰まり、己のバカさ加減にアキレ、大いなる自己嫌悪に陥ってしまった。

オレが歩いてきた道はラーメン街道ではない。


 なのにあなたは ラーメン屋に行くの〜♪
 ラーメン屋の町は それほどいいの〜♪
 この 私の 愛よりも〜ぉ〜ぉ〜♪

 
オレの背後に悲しい音楽が流れていった。


ラウンド10  (スタートから ?グラム)

 ダイエットの出直しを誓う(ひじきの煮物と茹で豚のサンチュ巻き)


朝、メルパルク岡山にて目覚めた。
昨夜は近くの「はまゆう」という居酒屋で、幻の名酒を20種類近く呑んだ。
呑み放題をいいことに、久保田の万寿、翠寿、碧寿、紅寿、得月などを交互にぐびぐびと呑んだ。
普段絶対に呑めない酒ばかりである。
本当に旨かったなあ。

昨日はラーメン二度食いや日本酒呑み過ぎなど、ダイエットの道から外れることばかりしていたので、体重は相当アップしている筈である。
だが体重計が無いので今朝は測定不能。
無くて良かった。
乗るのがコワイ。

午後五時、仕事を終えて広島に戻り、ワインを買って家に帰る。
今夜は妻のダイエット夕食である。
ひじきの煮物と、茹でたきゅうりを添え韓国味噌をつけてサンチュで包むという料理であった。

さあ、今日からもう一度ダイエットの出直しだ!

ワインのボトルを空け、広島の夜空に向けて固く誓ったのであった。


ラウンド11  (スタートから −1100グラム)

 ダイエットの鬼だ!!(もずく酢と九宝菜)


今朝の体重は前々日比700グラムのアップである。
理由は明確である。
分析の必要は無い。
己の不甲斐無さに拳を握り締める。

これまで着実にポントを重ねて有利な試合運びをしてきたボクサーが、途中でよそ見をしてノックダウンを喫したような、そんな無様な負け方であった。

今夜からまた再起を懸けて究極のダイエット料理を作るのだ。

必死の形相でスーパー内を駆け巡る男の姿があった。

そうそれは沢村忠ではなくこのオレである。


 ダイエーット ダイエーット ダイエットの鬼ぃだ〜♪ 


闘いのゴングが打ち鳴らされた。
オレは必勝を祈願し、リングの上に上がった。

今夜の必殺技はもずく酢九宝菜だ。


ラウンド12  (スタートから −1400グラム)

 明日はキャンプだ嬉しいな(ハンバーガーにワイン)


今朝体重計に乗ったら300グラムのダウンである。
でも三日前からみると400グラムのアップ。
ダイエット料理を始めて11日間で1.4キロ落ちてはいるが、最近は上がったり下がったりの繰り返しである。
おそらく今が大きなヤマ場なのだろう。


今日、余りにもいい天気だったので、急遽土曜日のキャンプ場を予約する。
夏休みが終わって最初の休日なのでテントサイトは少ないみたいだ。
キャンプはちょっとピークを避けるだけで、最高に気分良く過ごせる。
それにまだまだ海は温かいので十分泳ぐことが出来る。
本当のアウトドアのシーズンはこれからだ。

明日はキャンプ場前の海岸にゴムボートを出し、サカナをたくさん釣って、炭焼きして食べるのだ。ビールも旨いぞ。

おーっと、でもダイエット期間中だったんだよなあ。


今夜はキャンプ道具を揃えたりクルマに荷物を積み込んだりと忙しかったのでダイエット夕食は手抜き。
マクドナルドで今一番安いフランクバーガーチーズバーガーを買って来る。
これにレタストマトをたっぷり挟んで食べる。その他はフライドポテト
そしてビールとワイン。


ラウンド13  (スタートから −2000グラム)

 キャンプでもダイエット!!(タン塩、山賊焼き、フランスパン)


昨夜の手抜きのメニューは痩せる。
何と今朝の体重はマイナス600グラム。
ついにダイエット夕食を始めてから2キロ落としたぞ!


片添ケ浜オートキャンプ場に向かう途中、ジャンボ握り寿司で有名な「力寿司」に寄る。
握り寿司の中でもとくにハマチと鯛はでっかいので、ナイフで四等分くらいにしないと口の中に入らない。
今晩は鯛の炭焼きをする予定なので、豪華なサカナ三昧の一日になりそうだ。


ところが、この日のゴムボート釣りでは、狙いの真鯛どころかおかずとなるサカナが一匹も釣れなかった。熱帯魚のように色彩鮮やかなベラと蒲鉾の元になるエソが釣れただけ。


今夜の料理は当てにしていたサカナが釣れなかったので、持ってきた食材だけだ。

まずは定番のタン塩
やはり最初は塩から始めたい。
これにレモンをかけると旨いんだな。
それにサラダ菜を包んで食べる。
何とヘルシーなんだ。
キャンプ中でもしっかりとダイエット料理作戦は継続されているのだ。

続いてはタレ味の山賊焼き
あらかじめ下準備は朝出かける前にしておいた。
鶏の骨付きもも肉を日本酒にしばらく浸け込んでいたものを茹で、それをジプロックに入れてエバラ焼肉のタレを一本流し込んでおいただけのものだ。
夕方にはしっかりタレの味が全体に滲み込んでいる。
とても簡単だし、火が通っているし、旨いしと、申し分ない。
その上茹でてアブラを抜いているのでとてもヘルシーだ。
いいぞ、いいぞ、という感じだ。

最後の止めはフランスパン
これをアミの上ででかるく焼き、マヨネーズを塗ってサラダ菜を載せて食べるのだ。
ワインに最高に合うアテだ。

ワインをぐいぐいと呑みぐんぐん酔っ払っていく。キャンプの夜はいつもべろんべろんになってテントの中にもぐりこむのだ。


ラウンド14  (スタートから ?グラム)

 撤収、積込、収納


今日の朝食は焼きそばだ。
ツインバーナーの上に鉄板を置き、大量のキャベツもやしを炒め、豚の代わりに天かすを入れて作る。
キャンプの朝でもダイエタリーなのだ。
しかもこれだけの野菜を入れるとなると家庭のフライパンでは到底出来ない業だ。
豪快でとてもいい感じだ。

焼きそばをつまみ、ビールを呑む。
キャンプの朝はたとえ二日酔いであろうとビールと決まっているのだ。
だが、今日のやきそばはいけなかった。
日清とかマルちゃんなら間違いはないのだが、今日の****そばは酸っぱかった。
あーー、残念。
大事な朝食が台無しだ。
ぶつぶつと文句を言いながらそれでも焼きそばを食べる。

食後は週刊文春を読みながらゆっくりとくつろぐ。
しかしこのあと大変な後片付けが待っている。
それはそれは大変な作業だ。
食器の洗いものだけでなく、ゴムボートや水中メガネ、シュノーケルなどの水洗いと乾かしがある。
そして荷物の撤収とクルマへの積み込み。
楽あれば苦ありだ。
大量の汗をだらだらと流しながらチェックアウト時間ぎりぎりの11時55分にキャンプ場を出る。

喉が渇いてしょうがない。
爽健美茶をぐいぐいと呑むがいくら呑んでも喉が渇く。
昼メシに立ち寄った「餃子の王将」ではテーブルの上の水のボトルを全部呑み干し、お替りをお願いしたくらいだ。

家に帰ると女房はソファーに倒れ込んだ。
娘は本を広げた。
オレは物置に道具を収納していく。
濃密な一泊二日のキャンプが終わった。


ラウンド15  (スタートから −1400グラム)

キャンプでのダイエットは不可能(チンジャオロウスー)


今朝の体重は前々日比600グラムのアップ。
やっぱりキャンプでのダイエットは無理のようだ。
今日の夕食はチンジャオロウスー


ラウンド16  (スタートから −1100グラム)

 低迷期(妻の作る煮物と炒め物)


今朝はさらに300グラムのアップ。
昨夜のオレの料理は失敗だった。

今日は散髪屋に寄って帰る。
女房がレンコン、人参、糸こんの煮物鶏のオリーブ炒めサラダを作る。
ビールとワインを呑む。


ラウンド17  (スタートから −1600グラム)

 復活か?(実績あるハンバーガーとワイン)


今朝は久々の体重ダウン。
昨日から500グラム落ちている。

ダイエット夕食が思いつかず、減量実績のあるマクドナルドのフランクバーガーチーズバーガーに大量のレタス、トマト、カイワレを挟んでかぶりつく。
今夜もビールにワイン。


ラウンド18  (スタートから −1500グラム)

 停滞期(居酒屋で寄り道)


今朝は100グラムのアップ。
全然前に進まない。
ダイエット街道は果てしなく遠い。
先の見えない道である。

会社の帰り、居酒屋に寄り道をする。
ビールと焼酎を呑んでいい気分で家に帰ったら、女房が自分だけずるいと責めた。


ラウンド19  (スタートから −1800グラム)

 青竹冷酒で発狂


今朝は喜びの300グラムのダウン。
最近体重が増える一方だったので、少しでも下がると単純に嬉しい。

女房が、「今夜は私も外で呑みたい」と強く訴える。
そうか、わかった、わかったと物わかりの良いオレは素直に受け容れる。
夕方、女房、娘と待ち合わせ、「あまのじゃく」という居酒屋へ行く。
ここは女房が見つけた初めての店だ。

生ビールを二杯呑み、青竹冷酒を注文する。
冷凍庫の中でキンキンに冷やした青竹に冷酒を入れたものが出てきた。
青竹の高さは約60センチ。
竹の先は斜めにスパッと切ってある。
縦に立てた青竹の筒を傾け、別に用意された竹のコップに日本酒を注ぐ。
青竹筒の中の節には二つの穴が開いており下の大きな穴から日本酒が現れ、筒の中から竹先までの長いようで短い距離を静かに流れ、やがて滝壺である竹のコップへと落ちていく。
日本酒の透明感がすばらしく、なかなか趣のある光景だ。
しかも青竹が凍っていてとても冷たいので身が引き締まる思いだ。
お替りの度に新たに凍った青竹を持って来てくれるのも実に嬉しい。
冷たい日本酒は心地良く喉元を通り過ぎていく。
ついつい二人で4本の青竹、つまり8合の日本酒を呑んでしまった。

酔ったオレは理性を失いダイエット道のレールを脱線した。
帰りがけに吉野家の牛丼弁当を買い、タクシーで帰宅するやいなやビールを呑みながら牛丼をガツガツとむさぼってしまったのだ。

酔うと胃袋と脳みそが狂ってしまい、今まで食べたことをすっかり忘れてしまい無性に腹が減ってしまうという世にも恐ろしい病気の持ち主なのだ。
どうせこのオレはね。


ラウンド20  (スタートから −1000グラム)

 消滅寸前のダイエット街道(もずく酢、豆もやし、あんかけ)


今朝は悲しみの800グラムのアップ。
16日前に逆戻りである。
もうどうでもよくなってくる。
プッツンと切れそうである。
あー、やめた、やめた、という感じである。
ダイエットを始めて20日間、一進一退を繰り返してきたが、ここ最近は後退ばっかり。坂道をごろごろと転げ落ちる過程をモロに体感している。
あと少しで元に戻りそうだ。
今までの軌跡が消滅しそうである。
オレの前にダイエット街道は存在しないのか!

自暴自棄(ヤケクソ)になりそうな自分を何とか押し止めて、夕食のダイエット料理を作る。
今夜は前菜がもずく酢、続いて豆もやし炒め、メインがシメジ、エノキ、舞茸、キャベツ、白ねぎ、竹輪、豆腐のあんかけである。
そして、ビールにウイスキー。


ラウンド21  (スタートから −200グラム)

 これでいいのか!?(手巻き寿司)


昨日から更に600グラムのオーバーである。
ダイエットをスタートした21日前の体重よりわずか200グラム少ないだけの数値である。
ほとんど進歩していない。

このオレは一体今まで何をやっていたのであろうか。

何もしなくても同じだったのではないだろうか。

すっかり冷たくなった秋風が身にしみる。
気力は失せ、ぼんやりと窓の外を眺める。
隣接する巨大なマンションが視界を遮る。
焦点も定まらない。

煙草に火を点けようとしたが、煙草もライターも見当たらない。
そうだ、13年前から煙草を止めていたのだ。

玄関前の猫の額ほどの庭に立つと、野良猫が我が家と隣の家の間をよいしょよいしょと通り抜けている。
こら! と威嚇したが、無視してさっきと変わらぬ速度で悠然と立ち去って行った。

女房が体調が悪いというので、娘と二人で自転車に乗って買い物に出かける。
ちょうど昼前だったので、スーパーの惣菜コーナーは充実している。
美味しそうなコロッケが目に留まる。
その隣にはでっかいビックリチキンカツが並んでいる。

「揚げ物はカロリーが高くてダイエットの大敵」との情報がインプットされていたが、暫しの少考の後、コロッケとどでかいチキンカツを買い物カゴに入れた。

家に帰って買い物袋の中身を見せると妻がにっこりと微笑んだ。
妻も効果の現れないダイエット料理に涙していたのだ。
辛抱をしていたのだ。
済まなかった。
お前にもこんなに苦労をかけて。

味付けロールパンに切れ目を入れ、レタスとカイワレ、そしてその上にコロッケとチキンカツを挟んでかぶりつく。
豪快だ。
缶ビールもプシュッと開け、ググイッと呑む。
爽快だ。


これでいいのだ!! と天才バカボンのパパが耳元で言ったような気がした。


夕方も女房の体調が優れないので、娘と二度目の買い物。
刺身の盛合わせ
まぐろの短冊海老フライのパックを買って帰る。

今夜は手巻きだ。
手巻きは食い過ぎる。
気をつけないと腹がパンパンで動けなくなる。
いつもそうだが、やはり、今宵も、……そうだった。


これでいいのか!?


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いい筈が無い!!


それからは坂道を転げ落ちるように、オレのダイエット転落人生が始まった。

このことはもう思い出したくもない。

あれからステーキハウスでの無茶食いや、ワインのがぶ呑み、居酒屋のあとのトンコツ濃厚ラーメンとチャーハンとビールなど、メチャクチャな破滅型リバウンド行動が続いたのだ。

その反動はひどかった。

自暴自棄、やけくそ状態だった。

はっきり言って、もうどうでもよくなったのである。

いっそのこと、最初からダイエット作戦など実行しなかった方が良かったと、今では思っているくらいだ。

たとえば、甘いもの、ショートケーキなら一年だろうが、二年だろうが口にしなくても平気なのだが、ラーメン、トンカツ、カツ丼、天丼、牛丼、カツカレー、天婦羅うどん……の類は辛抱が効かないのだ。

全く駄目なのだ。

だから、もう止めました。

無駄な抵抗は止めました。

ここまで、読んでくれた人がいたとしたら、済まなかったと頭を下げます。

本当に申し訳ない。

さあ、これからは、ダイエットなどつまらんことを考えずに、好きなものを遠慮せず、腹一杯食っていくのだ。

いや、こんな時代だからこそ、食えるときに、腹一杯食って、厳しい時代を生き抜いていくのだ!!



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(追伸)
そして、そのあと信じられない事態の展開と、奇跡の復活が起ころうとは、このとき誰もが思わなかっただろう。
それはそうだ。
当然、そのような出来事など、あり得る筈がないのである。
努力なくして、栄光なし。



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もし、ここまで読んでくれた人がいたとしたなら、大変申し訳ない!!