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(3)広島〜大阪 鈍行列車の旅(復路)
| 広島 |
→→ |
岡山 |
→→ |
相生 |
→→ |
姫路 |
→→ |
大阪 |
10:23
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163分 |
13:06
13:10 |
71分 |
14:21
14:22
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19分 |
14:41
14:58 |
60分 |
15:58
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| 出発 |
シティ
ライナー |
乗換@ |
普通
電車 |
乗換A |
新快速 |
乗換B |
新快速 |
到着 |
そして、二日後、大阪に戻る日がやって来た。
広島で重要な用事を済ませた私はまたも広島駅の在来線一番線プラットホームに立っていた。
4月29日、土曜日、午前10時10分のことである。
立ち食いうどん屋の券売機の前に立った私は迷わず天玉うどん(370円)と鮭むすび(100円)のボタンを押す。カウンターでチケットと引き換えにもらったうどんをすばやくかきこみながら、むすびにかぶりつく。
電車の発車時刻まであとわずかだ。急いで食わないと間に合わない。だけど急いで食うのはもったいない。急ぎながらじっくりと味わう、という非常に難しい食い方を強いられるのであった。
ハフハフとうどんを啜りながら思ったことは、やはりこのうどんには天ぷらと玉子がドンピシャに合うということであった。そして、おそらくこの立ち食いうどんが日本一旨いに違いない! と再確認したのである。
こんなことを書くと、「一体お前は今まで何軒の立ち食いうどんを食ったことがあるのだ?」と巷の立ち食いうどん評論家から一斉に非難を浴びるかもしれない。
確かに私がこれまで食ったことのある立ち食いうどんの店なんて、せいぜい30軒がいいところだろう。それでも、この自信は、たとえ根拠がなかろうと、私自身のなかで揺るぎのないものとして長い年月をかけて確立されたものであり、断固としてこの主張を捻じ曲げることなどできないのである。
10時23分、岡山行きのシティライナーは広島駅5番線のホームから出発した。来たときと同様、シティライナーとは名ばかりで、3つの駅を通過しただけで、後はずーっと各駅停車の普通列車である。
とはいえ、いいことがひとつ。車両のタイプが進行方向に向かって2人掛けの座席であり、背もたれもほんのちょっと傾斜がついているので、随分と乗り心地がいいのだ。こいつはいいや、と一人喜ぶ。
何といっても岡山までのシティライナーは163分、つまり2時間43分という長い時間、直角の背もたれでないというのは本当に助かる。
車内の乗客も少なくて、2人用の各座席に1人という乗車割合なので、随分とくつろげる。これは新幹線よりもはるかにゆったりとしているぞ。
車窓を通り過ぎる景色は適度なゆるやかなスピードで流れていくので読書に飽きたら時おりぼんやりと外を眺めることが出来る。新幹線だとスピードが速い上にトンネルが多いのでこうはいかない。
それに新幹線だと車内に乗り込んだとたんに、一気に別の場所に引き離されたような遮断感を味わうが、鈍行列車は余韻を残しながらじわりじわりと想い出の地を離れていくという優しさがある。
電車は尾道駅に停車した。本当は、この駅で途中下車して、朱華園のラーメンを食いに行こうかどうしようか? と随分と迷ったのである。だけど1時間で帰ってこれるかどうか自信がなかったので見送ったプランであった。
尾道駅を発車して、しばらく走るとすぐ右手に行きたかった朱華園がみえる。うわーっ、すごい行列だ。店の前から商店街のアーケードまで客が並んでいる。ああ、ここで降りなくて良かった、と胸を撫で下ろしたのであった。

↑遠くからみる(左上)とよくわからないが、アップしてみる(右上)と朱華園に並ぶ大行列
13時6分、岡山駅に到着し、13時10分発の各駅停車相生行き電車に乗り継ぐ。
14時21分、相生駅に着き、14時22分発の野洲行き新快速に乗り換える。本当はそのまま座っていれば大阪に着くのだが、まだやり残りしたことがある。
そう、姫路駅のプラットホームの駅そばである。
ラーメンの麺のような黄色いそばに和風だしのつゆという、珍しい組み合わせのそばを食うのだ。
姫路駅には14時41分に到着して下車した。次の新快速が来るのは14時58分。17分の間がある。ポケット時刻表で調査済みなのである。

私は初めて姫路駅の駅そばの店に入った。たまたま14時から17時まではタイムサービスで駅そば330円が250円と安くなっている。何だか随分と得した気分だ。
私は駅そばの天ぷらを選んだ。これが一番の人気商品なのである。
なるほど、噂通り、中華麺のようなそばである。スープの色は関西にしては濃い目である。その上に天ぷらがのっかり、そして刻みねぎが散っている。
私はつゆを啜った。
うーん、これはいける。かなりの濃い口ではあるが、このスープは唸るほど、しみじみと奥深い旨さだ。
なるほど、これは評判になるはずである。
麺は確かに中華そばに近いタイプである。この和風スープだと、うどんの麺でも別に問題ないように思うが、昔からこの食感に慣れ親しんだ姫路住民にはこの黄色いそばでないといけないのだろう。
それにしても、このつゆは凄い。全国駅そばナンバーワンと言われるのも頷ける。
だが、繰り返し、しつこいようだが、駅うどんでは、やはり私的ナンバーワンは広島駅一番ホームの立ち食いうどんなのである。
駅そばの余韻をじんわりとかみしめていると、ホームに長浜行き新快速が滑り込んできた。
私はこの旅最後の普通列車に乗り込んだ。
姫路を出発したのが14時58分。そして、大阪駅に着いたのが15時58分であった。
往きと違って、帰りの全行程所要時間は5時間35分もかかった。
だが、往きと同様、疲労感はほとんどなかった。
それよりもまるで自分の足で大阪〜広島間を踏破したかのような達成感があった。ただただ車内では座席に座っていただけで、プラットホームではうどんを啜っていただけである。何もしてないのだが、普通の何倍もの時間をかけて移動したことに意義を感じるのである。一歩ずつ踏み締めて山陽道を制覇したかのようなマボロシの充実感があったのである。
別に新幹線に乗らずに普通電車で大阪〜広島間を往復することなど、何の自慢にもなりはしない。誰でもやれば出来ることである。だけど、自分の年代の中年オヤジにはバカバカしくてなかなか出来ないように思うのだ。
忘れ去った遠い昔の、真夏の太陽の黄金の輝きを、ぐいっと掴むような体験はできなかったが、なんだかカタチに現れないナニモノカに出会えたような気がした。
ひょっとしたらあと二、三十年後になったら今のこの時期が我が人生の第二次黄金時代だったなあ、と振り返ることがあるかもしれない。それともただのバカだったなあ、と嘆くことになるかもしれない。
よくはわからないまま、私は大阪駅のプラットホームに降り立った。
大阪駅の改札口を出たところには妻と娘が迎えに来ている。
二人には何の土産もないが、この鈍行列車の一人旅の土産話をしよう。
そうだ、ニューミュンヘンで冷たい生ビールをぐいぐいと呑みながら、妻と娘に今回の旅自慢を少々オーバー気味に語ろう。
落ち着くところ、今の自分にとっての終着駅は、妻と娘のいるトコロである。
時間をかけて一つずつ積み重ねた結果が今ここにあるのだ。
数十年前には考えもしなかった「家族」、との待ち会わせ場所に私は急いだ。
広島〜大阪間
■ 所要時間:5時間35分
■ 出発から到着までの全駅=49駅
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